禁断兄妹
第84章 愛してない
静かに重なった唇
それは
息をするように
自然だった。
「嬢‥‥あなたなんて、愛してない‥‥」
修斗の手に
角度を変えられて
再び重なる唇
ゆっくりと割られた私の口内に
修斗の熱い舌が
そっと滑りこみ
私の舌を
包み込むように
愛撫する。
「愛してなんかいない‥‥」
心まで包み込まれるような
深く
柔らかな口づけ
修斗の心が
ここにある
今やっとわかった
全てが
わかった
涙が
溢れて
私は両手を
修斗の逞しい首に回した。
「私だって愛してないわ‥‥私は檻を出るの‥‥」
「出ろ‥‥もう二度と戻るな‥‥」
慈しむように口づけられて
髪を
頬を撫でられて
とめどなく
涙が溢れる。
今度こそ私は檻を出る
極道の世界を離れて生きていく
それが私の願いであり
修斗の願い
私達の人生は
交われない
「だけど、今は、離したくない‥‥」
熱い吐息と共に
首筋を食むように
押し当てられた唇
頬から滑り落ちた手が
コートの合わせ目から
中へと滑り込み
パジャマの上から
胸に触れた。
「‥‥っ」
ぞくりと
背筋が震える。
切なく寄せられた男らしい眉
その下の
燃えるような瞳
「今夜だけでいい‥‥俺のマンションへ来てくれ‥‥」
私は
頷いた。