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禁断兄妹

第86章 時を越え運ばれし手紙、それは運命の書



「夜中にごめん、柊兄。話したいことがある」


ニューヨークにいる俺に
和虎からの電話
声の緊張感が尋常ではなくて

俺は眠りに入りかけていた身体を
ベッドから起こした。

年末年始を日本で過ごし
ニューヨークに戻ってから
一週間ほどが経っていた。


「どうした」


「あのね、ああ、何から話していいかな、ごめん、俺もちょっと興奮していて」


「落ち着け。ゆっくりでいい」


「うん。まず言っておきたいんだけど、これは七年前の話になる。萌が襲われた時の話だ」


萌が襲われた時

何故今
その話が

どくりと
心臓が脈打った。


「大丈夫だ。遠慮はいらない」


俺の言葉に和虎は
うん、ありがとう、と
一つ深呼吸をして


「あの時ヒロが、萌を助けたいきさつとかを、病院の前で俺達に話してくれたことがあったよね。
 その話の中で、萌が何かを探すように辺りを見回して、ヒロに『エアイ』とか『テカニ』とか訴えたっていうくだり、覚えてる?」


思ってもみない質問から始まって
混乱しながらも
記憶を辿る。


「確かにそんなくだりがあったのは覚えている。でも意味がわからないままになっていたな」


「あれはね、『手紙』だったんだ。封筒と便箋の『手紙』だ」


「手紙?」


「萌を襲った男は、あの時萌から、ある手紙を奪い取っていたんだ。
 萌はそれをヒロに伝えて、取り戻して欲しかったんだ。でも喉が潰れていて声が出なくて、『エアイ』とか『テカニ』とか、うまく伝わらなくてヒロは理解できなかった。そしてその直後萌は記憶を失って、奪われた手紙のことは、忘れ去られてしまった」


熱のこもった和虎の声が映し出す
知られざるシーン

手紙‥‥!手紙‥‥!
必死に訴えかける萌がリアルに思い浮かんで
息が苦しくなるほど


「その手紙は、萌を襲ったあの男が、今までずっと持っていたんだ。ちなみにあの男は今、霧島組の組長になっているらしい。
 で、何が言いたいかって言うとね、その手紙が今日取り戻せたんだ。今ここに、俺の手元にある」


「えっ‥‥」


「由奈に頼んで、霧島組に直接出向いてもらってね、組長から取り戻してもらったんだよ」


由奈

若かった俺の
ほろ苦い思い出の中に住む女性

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