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禁断兄妹

第86章 時を越え運ばれし手紙、それは運命の書



「手紙はさっき霧島組の組員から受け取った。何も書いていない真っ白い封筒で、中に何枚も便箋が入ってるみたいで厚みがある。封は開いてるんだけど、最初から開いてたってことと、中は組長しか読んでないってことを言われた。
 本来は萌に渡すべき物だけど、でも萌はまだ記憶を取り戻していない状態だ。これを見せたら混乱してしまうから、まず柊兄に伝えるべきだと思って、電話したんだ」


降って湧いた
七年前に萌が奪われた手紙の存在

それが取り戻され

和虎の手の中にあるという

俺は一瞬
時空をさまようような感覚を覚えた。


「思ってもみなかった話で、まだ頭がついていかない状態だが‥‥とにかくお前の行動の全てに感謝する。ありがとう、和虎」


心から信頼できる和虎
話してくれたことは全て真実だろう
しかし疑問もある。


「和虎、疑問がある。
 どうして七年も経った今、あの時の萌の言葉が手紙だとわかった?」


「ヒロに話した時もそう言われた。そもそも、それが気になるよね。
 実はね、俺はお正月にママの店で萌と会ったんだよ。その時に萌が、柊兄と過ごしている間にあった出来事を話してくれてね。話を聞くうちに、萌は柊兄を一人の男性として意識し始めているように感じたんだ。それが、今回の手紙にまつわるストーリーのきっかけなんだ」


和虎が言う出来事というのは
萌がバスルームで
俺のペンダントの中を見ていた時のことだろう

あれから萌は明らかに俺を意識している様子で
ニューヨークへ帰りたくなくなるほど後ろ髪を引かれたことは
記憶に新しい。


「この七年間、柊兄はずっと辛抱強く、萌の心が癒されて、記憶が戻るのを待ってたじゃない。俺は萌の様子から、その時が訪れようとしてると強く感じたんだ。
 それで、俺にも何かできることはないだろうかって考えた。勿論余計なことをして柊兄の七年をぶち壊しにするつもりなんてない。柊兄と萌に迷惑をかけないように、水面下で何か力になれることはないかって。それで思い切って、要に電話したんだ」

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