禁断兄妹
第86章 時を越え運ばれし手紙、それは運命の書
「───若く未来のある柊と萌の為に、俺の最期の頼みを、聞いて欲しい。頼むよ、謙‥‥一ノ瀬巽‥‥」
和虎の震える声が消え行って
堪えていた嗚咽が漏れるのが
小さく聞こえた。
つむじ風にページをめくられた一冊の手記
今ゆっくりと
閉じてゆく。
訪れた静寂の中
提示された謎の重さに身動きもできず
俺は震える息を吐いた。
これは
父さんが抱え続けてきた重さ
死ぬ間際まで抱え続け
そして死んだ
父さん
続く言葉が
みつからない
言葉にならない様々な想いが
湧き上がっては溢れて
走馬灯のように
あなたと過ごした時間が
目の前を流れて
ああ
俺は何を言えばいい
初めてあなたに触れた気がする
初めて
あなたの血の匂いを
嗅いだ気がする
不器用で臆病なあなたを
今
心で強く抱きしめる
一ノ瀬巽
あなたを
愛している
「和虎‥‥読んでくれて、ありがとう‥‥」
こんなに長く重たい手紙を読み上げてくれたことに
感謝を
そして
俺は一つの
決意を
「俺は今から日本に行く‥‥空港で落ち合ってくれないか。その手紙を持って、俺は北海道へ行く」
「えっ」
「KENTAROは北海道にいる。彼に会って、直接話を聞きこうと思う」
KENTAROはもうモデル業をほとんどしておらず
北海道でカフェのオーナーをしていると
業界内で話題になったことがある。
店の住所は調べればすぐにわかるだろう。
父さん
母さん
俺は行くよ
あなた達が遺した
謎を解く為に
謎は俺の宿命そのもの
己の宿命と対峙したその先に
萌との未来が
ある