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禁断兄妹

第87章 バッドエンドの続き



電話で手紙を読み上げたその日に
柊兄はニューヨークを立ち日本へ飛んだ。

すぐに動くことを決めた柊兄
取り戻した手紙は
それだけの価値がある驚くべき内容だった。


「呼び立てて悪かったな」


成田空港に姿を現した柊兄
真っ白いロングコートとマフラーを翻して
さながら氷雪を操る冬の王

柊兄と萌の強く深い絆を間近で見てきた俺は
もう柊兄に対して恋愛感情を持ってはいないけれど
相変わらずのカッコよさには惚れ惚れしてしまう。


「いくらでも呼んでよ。はい、これ」


俺は手紙を差し出した。

サンキュ、と微笑みを浮かべ
丁寧なしぐさで受け取った柊兄

手紙をじっと見つめていた穏やかな瞳を
俺へと向ける。


「ありがとうな、和虎」


「ううん」


手紙の内容を思い出して
お父さんの想い
柊兄の想い
考えただけでまた胸がいっぱいになって


「涙もろさが加速してないか」


「だって‥‥」


ふふっと笑う柊兄
これから自分の宿命と向き合う為に
たった一人でKENTAROに会いに行く

本当の父親が巽さんじゃなかったら
確かに柊兄と萌は他人だ
二人の禁忌の壁はなくなり
正々堂々と愛し合える
それは本当に喜ばしいことだ

だけど巽さんが言うように
柊兄は自分こそが禁忌の子だという真実を受け入れなければならない

巽さんと夏巳さんの苦悩も
背負うことになるだろう

それはどれほど
辛いだろうか


「和虎。俺は北海道で全てに方をつけて、また東京に戻る。そしたら、飲みにでも行こうぜ」


「うん」


「大丈夫だ。泣くな」


抱き締めるように片手を背中に回されて
優しく叩かれた。

こんな場所でも
さらりと
堂々と


柊兄

この七年で柊兄は大きくなった
すごく大きくなった

懐が広くて
優しくて
強くて

柊兄が大丈夫だと言えば
本当に大丈夫だと思える。


「じゃあな。いってくる」


冬の王の
余裕の微笑み

眩しい

柊兄に乗り越えられないことなどない

そう思わせる
絶対的な輝き

見送りながら
こんな男性から永遠の愛を捧げられている萌は
本当に幸せ者だなと
羨ましく思う。

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