禁断兄妹
第88章 ギフト
「こんにちは、ようこそ。一ノ瀬萌さんですね」
「はい。よろしくお願いします」
クリニックは駅前のビルの中にあって
病院というよりも
美容室やエステサロンのようなところだった。
アイボリーを基調とした清潔な空間に
ソファやリクライニングベッドが置かれていて
微かに聞こえるヒーリング音楽
アロマが焚かれていて
とてもいい香り
「お声を聞いた時から思っていましたが、可愛らしい方ですね」
「えっ、あ、ありがとうございます」
「緊張しないで。リラックスリラックス」
にこやかに微笑む先生はすらりとした長身で
ショートカットが良く似合う素敵な女性
白衣ではなく紺色のタートルネックのセーターにスラックス姿で
凛とした上品な雰囲気は宝塚の男役のよう
「ではまずはこちらにお掛け頂いて、と」
三人掛けのソファに私が
一人掛けのソファに先生が座って
私と先生はテーブルを挟んで向かい合った。
「ここへ来ること、弘至君に教えてあげたんですね。彼からよろしく頼むと電話がありましてね。随分と熱のこもったよろしくでしたよ」
先生は楽しそうに笑う。
「灰谷さんはいつも私達家族を気遣って助けてくれるんです。心配してくれているんだと思います」
「そうですか。力持ちですから、荷物運びとか引っ越しの時に非常に助けになりそうですね」
先生の言葉に思わず笑ってしまう。
「実は、家具を動かす時に灰谷さんにお願いしたことがあります」
「そうそう、そういう使い方であってます。メレンゲを泡立てるくらいじゃ力が有り余ってるでしょうから、使ってあげたらいいですよ」
先生はちょっと変わった感じの面白い方
灰谷さんのことや灰谷さんのお店のお菓子のことを楽しく話しているうちに
自然と緊張がほぐれていく。