禁断兄妹
第89章 禁断兄妹
「わからないから、聞いているんです。話して欲しいんです」
「話す義理などない。俺の記憶は、俺だけのものだ。
どけ‥‥」
KENTAROは俺の肩を掴むと
邪魔な障害物のように
横へと押しやろうとする。
このまま行かせてしまえば
KENTAROは言葉通りもう二度と俺を近づけないだろう
俺は両足に力を込め
その場に踏みとどまった。
「私はあなたの子供かも知れません。聞く権利はあると思います」
「俺は親子の情や絆とかいうものに昔から興味がない。仮にお前が俺の子だったとしても、俺は何の愛情も責任も感じない」
「愛情も責任も求めてはいません。一切他言もしません。ただ私は、あなたと母の間に何があったのかを───」
「どけ‥‥何度も言わせるな。殴られたいか」
掴まれている肩に
握り潰されるような痛み
「‥‥っ」
何故ここまで手酷く俺を拒む
俺は本能的に
KENTAROこそが本当の父親だと確信している
そして彼もそう感じているはずなのに
いや感じているからこそなのか
悔しくて
虚しくて
胸が焼けるようだ
「‥‥どきますよ。
傷つけあう為にここへ来た訳では、ありませんから」
KENTARO
あなたこそ俺の何がわかる
俺がどれほどの孤独を抱えて生きて来たのか
あなたにわかりますか
「‥‥ただ最後に、これだけは言わせてください」
このまま行かせる訳にはいかない
賭けに出るしかない
「あなたは一ノ瀬巽と結婚した夏巳を許せず、彼女を無理やり犯したのではないですか‥‥?」
KENTAROの瞳が
爆ぜるように光った。
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