禁断兄妹
第89章 禁断兄妹
突きつけられた
真実への鍵
受け取ればそれでいいのか
確かにこれで真実は明らかになる
明らかにはなる
けれど
「受け取れよ。その為に来たんだろう?」
痺れを切らしたように
俺のコートのポケットに
ねじ込まれたハンカチ
「‥‥もう二度と俺の前に現れないでくれ」
そして
その長い足が動き出す。
違う
俺は事実だけを求めて
ここまで来た訳では
なくて
そうじゃなくて
「待ってください‥‥っ」
駆け出し
KENTAROの前に回り込んだ。
「あなたは一ノ瀬夏巳を一人の女性として愛していたんですか‥‥?」
細められた瞳
その奥に隠されている物語を
あなたの口から
聞きたい
「どけよ‥‥」
「この手紙には、結婚後の一ノ瀬巽と夏巳の苦悩がつまびらかに書かれていました。私の出生を巡って、想像を絶する苦悩と葛藤が二人にはあったんです。それをあなたに知って欲しい。そして、あなたと夏巳の間に何があったのか、教えて欲しいんです」
強引に俺の横をすり抜けようとするKENTARO
俺は行く手を塞ぐように
片手をその胸の前に出した。
「逃げるんですか」
真っ直ぐ前を向いていたKENTAROの顔が
俺へと向けられる。
無言のまま俺を強く睨みつけ
そして
傾けた顔を
俺の喉元に寄せる。
「‥‥逃げる?この俺が?
一ノ瀬柊、お前何様なんだよ‥‥」
食らいつかんばかりに
牙を剥き低く唸る
怒りも露わに
「想像を絶する苦悩と葛藤‥‥?あの二人にはそれがあって、俺にはないとでも‥‥?
ふざけるなよ、お前に何がわかる‥‥」