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禁断兄妹

第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①


外は既に暗く
雪景色は街灯に照らされて
白く照り映えている。


「ねえ、すごい‥‥あれは全部凍ってるの?」


「うん?」


「あの屋根のところ、ギザギザした氷がいっぱい」


信号待ちで止まったバス
萌が指差したのは
たくさんのつららが下がる屋根


「ああ、つららだね。屋根から落ちる水滴が少しづつ凍って、あんな風に細長くなるんだ。確かに東京で見ることはないかな」


「すごい。牙とか、とげみたい‥‥」


萌は感心したように眺めている。


「子供の頃はあれを折って、舐めたりしたな」


俺の言葉に萌が振り返る。


「どんな味?」


「屋根の味」


「えー?!」


輝く瞳を見開いて
笑いだした萌

他の乗客の迷惑にならないよう
口元に両手を当て
声をあげずにクスクスと身体を揺らす様が
しとやかだ

楽し気に細められた
美しい弓のような瞳を見つめながら


「綺麗だな‥‥」


「うん。すごく綺麗。雪も氷も」


俺が言ってるのは
つららや雪景色のことじゃないけれど
そうだな、と
笑った。

萌は本当に大人になった

綺麗になった

たった一人で俺に会いに来た行動力
KENTAROと対峙した時に見せた
凛とした強さや
深い慈愛の心

少女から大人の女性へ

心身共に
美しく花開くように成長している萌

こんなに素敵な女性が
俺を心から愛してくれているなんて


「幸せだ‥‥すごく、幸せだよ‥‥」


「私も、本当に幸せ‥‥」


繋いだ手に
どちらからともなく
柔らかな力がこめられて

甘やかに疼く
胸の奥


「愛してる‥‥」


言葉にせずにはいられなくて
小さな耳に唇を寄せ
吹き込むように囁くと


「私も愛してる、柊‥‥」


同じように
耳もとで囁かれる愛の言葉

例えようもない幸福感が
俺を満たす。

手放しで送り続けた愛は今
やまびこのように
無限の愛となって還る


愛してるよ


和虎のプレゼントを使える日が
まだ先だとしても

強がりではなく
今俺は
十二分に幸せだよ

 

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