禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
「後で母さんと灰谷と和虎に電話をしような。みんな心配してるだろう」
「うん。
‥‥あ、そういえば和虎さんから柊に渡してって頼まれたものがあって‥‥」
萌はバッグの中から小さな紙袋を取り出し
俺に差し出した。
「時間がなかったから、たいしたものが用意できなかったけど、プレゼントだって」
「へえ‥‥ありがとうな」
ドラッグストアの紙袋
なんとなく嫌な予感がして
萌からは中が見えないように袋を開け覗きこむと
コンドーム
「アホか‥‥」
俺は思わず
笑ってしまった。
「何が入ってたの?」
肩を揺らし天井を仰いだ俺に
萌の無邪気な声
「ああ‥‥目薬。よく効くのがあるって、前に和虎が言ってたんだ」
「そうなのね。本当和虎さんて優しいし、気遣いが細やかだね」
「ふふっ、そうだな。あいつらしい気遣いだな‥‥」
時間がない中でも
ユーモアたっぷりの祝福を忘れない
愛すべき和虎
感激屋のあいつのこと
萌の記憶が戻ったことを
きっと心から喜んでくれているだろう
「東京に戻ったら、和虎と灰谷への礼を兼ねて、四人で食事に行こうな。今の俺と萌があるのも、あの二人のお陰だから」
「うん‥‥本当に、そう思う」
「父さんの手紙もあの二人が取り戻してくれたんだ。その話も萌にしたいし、俺がKENTAROに会いに来た理由と、得られた真実についても話したい。他にもいっぱいある‥‥話は尽きないよ」
「全部聞かせてね。全部聞きたい」
「俺も、萌の話は全部聞きたいよ‥‥」
愛の告白のように
囁きあい
微笑みを湛え
見つめあう
口づける一秒前のような官能的な空気に
萌ははにかみの微笑を浮かべ
幸せそうなため息をついて
窓の外へその視線を流した。
「雪景色、すごく綺麗ね‥‥ここに来るまでは無我夢中で、景色を楽しむ余裕がなかったから‥‥」
「萌は北海道、初めてだもんな。街中は雪が少ないけど、この辺は雪が多いな」
「うん。こんなにたくさんの雪を見たの、初めて」