禁断兄妹
第91章 禁兄 The Final~Love Never Dies~①
「さっき、お父さんの好きだった曲を聞きながら、何を思っていたの‥‥?お父さんのこと?お母さんのこと‥‥?寂しい?悲しい?今も苦しい‥‥?」
柊の唇が引き締まり
僅かに震えた。
愛する人を喪った悲しみ
孤独
きっとそれが
柊の心のとげ
私は柊の逞しい胸に手を伸ばし
そっと手のひらをあてた。
しっとりと汗ばんだ熱い肌
その下で力強く脈打つ命
柊はほろ苦い微笑みを浮かべると
ゆっくりと首を振った。
「心配させてしまって、ごめんな‥‥確かに父さんと母さんの事を考えていた。でも寂しいとか悲しいとか、そんなことは思ってなかったよ。萌と再び愛し合えることになった喜びを二人に報告していたんだ。ただ‥‥」
「ただ‥‥?」
「‥‥直接伝えたかったなと、思った」
「ねえ柊、それを寂しいっていうのよ。悲しいっていうのよ」
ぴくりと震えた身体
切なく瞬いた瞳
「我慢しないでね。何でも話してね。私にもっと甘えて‥‥」
「萌‥‥」
「うん」
「愛してる‥‥」
「私も愛してる」
「ずっと俺のそばにいて。俺を独りにしないでくれ‥‥」
微かに震えた声
苦し気に私を見つめる瞳は
少年のように澄んで
「うん。もう大丈夫‥‥私はずっとそばにいるわ‥‥」
心をこめて
語りかけた。
目の前の柊へ
その心の中に住む
少年の柊へ
「もし柊のとげが溶けなかったとしても、私はそのとげごと、柊を愛してる。柊が柊である限り、どんな柊も、愛してる」
柊の美しい瞳が
万感の想いを込めた微笑みに細められた時
その目尻から
光にも似た涙が零れ落ちた。
「萌‥‥」
柊が両手を広げた。
私も大きく両手を広げて
私達はお互いに一歩踏み出すようにして
抱き合った。