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禁断兄妹

第13章 ごめん萌


「ただいまー」


玄関には明かりがついていたけれど
家の中は静まり返っていた。

美弥子の奴出掛けてるのか

俺は自分の部屋にバッグを放り投げると
隣の萌の部屋へ

ノックをして声をかける。


「萌、入っていいか?」


「あ、うん!」


嬉しそうな声が返ってきて
ドアを開けると
真っ暗な室内

目が慣れなくて
俺は一瞬立ち止まった。


「わー、お兄ちゃんおかえりー」


奥のほうから可愛らしい声が聞こえて
俺の顔は自然と緩む。


「ただいま‥‥起こしちゃったか?」


「んーん、起きてた」


そう言うけれど
声は少し寝起きっぽい。

目が慣れてきた俺は
真っ暗な室内をベッドに向かって歩く。


「あ、移るかも知れないよ、大丈夫?」


「俺はバカだから平気だよ。母さんどこ行った?」


「冷えピタ切れて、買いに行くって」


「ったく、ストックしとけよなあ」


俺はその辺にあった椅子をベッドの横に引き寄せて
腰を掛けた。

暗がりの中
掛け布団から白い萌の顔が覗いてるのが微かにわかる。

俺はその顔の辺りに笑いかけた。


「まだ熱はあるの?」


「かなり下がったー‥‥37度ちょっとかな」


「薬飲んだか?ご飯は?」


「さっきお粥食べて薬飲んだよ」


「そっか」


「お兄ちゃん‥‥なんだか久しぶりだね」


萌が嬉しそうな声を出す。

俺に会うのを嬉しいと思ってくれる
それがとても嬉しい。


「そうだな‥‥」


お祭りの日以来
俺達はあまり顔を合わせていなかった。

もともと俺の毎日は
講義と試験勉強とバイトでハードだけど
父さんが帰るまで気持ちが落ち着かなくて
俺は萌が起きている時間に家にいることを
それとなく避けていた。


「お兄ちゃん、大学生になってからあんまり家にいないんだもん」


「そうかもな」


バイトで夜遅いことが多いし
萌と顔を合わす機会は
昔に比べて確かに減っている。


「全然遊んでくれないし。寂しいよ」


「はは、ゲームの相手しろってこと?」


「うん。ふふ」

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