
禁断兄妹
第14章 地獄への入り口
俺の心臓は
体内にけたたましくその音を響き渡らせる。
俺を突き破って溢れ出た怒りは
鎖を引きちぎった獰猛な獣のように
目の前の憎むべき男へ
襲いかかった。
「‥‥ふざけるな!!!」
俺は握った両拳を
テーブルに強く振り下ろした。
鋭い音をたてて
ガラスの表面に亀裂が走る。
「俺が言わなきゃ一生隠し通す気だったのか!!!バカ野郎!!!」
そのテーブルを俺は立ち上がりざま
足で真横に蹴り飛ばした。
すっ飛んでいったテーブルは
大きな音をたてて壁と衝突し
俺と父さんを隔てるものは何もなくなった。
「柊‥‥っ」
父さんも顔をひきつらせて立ち上がった。
「母さんがどんな思いで死んでいったか、あんたにわかるか‥‥最期の時に母さんがなんて言ったか、知ってるか‥‥
いや、興味なんてないよな‥‥
母さんが死んだ日も、あんた仕事だったな‥‥
本当に仕事だったのかよ‥‥美弥子と会ってたんじゃねーのかよ!!!」
俺は父さんの胸ぐらを掴んで強く引き寄せると
その身体を思いきり突き飛ばした。
「‥‥!!」
壁に尻餅をつくように
後頭部と背中を打ちつけて
顔を歪める父さんを
俺は何の罪悪感もなく見下ろした。
「‥‥痛い?」
「‥‥」
「その何十倍も苦しみながら母さんは死んだよ」
父さんは唇を噛み締めたまま
何も言わずに俺を見上げている。
