禁断兄妹
第15章 嫉妬‥‥暗い炎
「帰らないって、どこに住む気だ」
俺は黙ったまま起き上がると
テーブルの上のタバコとライターに手を伸ばした。
一本咥えると
火をつけながらバルコニーへ向かう。
外に出ると
もう日はすっかり高い。
煙を吐き出しながら
俺は口を開いた。
「‥‥萌と美弥子は、昨日のことに気づいてるの‥‥?」
俺からの突然の問いかけに
父さんは戸惑うように少し黙った。
「萌は‥‥寝ていて気づかなかったようだ」
「嘘じゃないな」
「本当だ」
そうか
俺は思わず安堵の息をついた。
「美弥子は部屋の外で大半のことを聞いていたようだ‥‥あれからずっと、お前に謝りたいと、泣いている」
俺は鼻で笑った。
泣くくらいなら
不倫なんて最初からしなければいい
「俺が口止めしていたばかりに、美弥子はずっとお前に負い目を感じて生きてきたんだ‥‥許してやってくれ」
あの天然女に負い目を感じるような繊細さがあるとは思えなかったが
しかし美弥子がそんな状態では
いずれ萌にも伝わってしまいかねない
「‥‥俺はもう腹は立ててない、あの時は感情的になっただけだ‥‥美弥子にはそう伝えてくれ。もう終わったことだ。気に病むなと」
俺は心にもないことを言った。