禁断兄妹
第21章 同じ世界
「あっ!萌ちゃーん」
部活が始まる前
音楽室にいた私に親友のたかみちゃんが駆け寄って来た。
「萌ちゃん早いねー。一番乗り」
たかみちゃんが隣に腰かける。
「うん。楽譜のチェックとかしたくて」
「これ今度のコンクールの?昨日もらったばかりなのに‥‥」
もう書き込みだらけの楽譜を
たかみちゃんが目を丸くして覗きこむ。
「すごいやる気‥‥萌ちゃんメンバーに選ばれるかもねっ」
「うん。だといいなって、思ってるんだ」
何かにがむしゃらに打ち込んでいないと
あの日のことばかり
お兄ちゃんのことばかり
考えてしまうから
あれから私は部活と勉強に
以前よりも熱心になった。
「でも、体壊さないでよ。萌ちゃん少し痩せたよ」
「えー?背が伸びたからかな。大丈夫だよっ」
「ううん。なんだか元気ないしさ。無理してるって、気がする」
「‥‥」
「悩んでることがあるなら相談してよ。話すだけでもすっきりすることって、あるから」
「うん‥‥ありがとうね」
たかみちゃんは優しい
大好き
でも
この胸の苦しさは
誰にも話すことができない。
「心配かけてごめんね。でも、大丈夫だから」
私はたかみちゃんに笑いかけた。