禁断兄妹
第22章 俺はもう、あいつのことは忘れる
今日俺達は
初めてコレクションのランウェイを歩いた。
スチールとは違う
今まで感じたことのない興奮と高揚感
それほど有名なメゾンではなかったけれど
俺を虜にするには十分
和虎はスチールのほうが好きだと言ったが
俺は今日一日で
ショーモデルという仕事にすっかり魅了されていた。
「柊兄さ、さっきスーツの人と話し込んでたよね。どっかの事務所の人?」
「ああ。名刺もらった」
俺は胸ポケットから取り出した名刺を和虎に見せた。
ショーの後のパーティーで
俺は色んなエージェントから声を掛けられた。
その中でも一番大手
パリ、ニューヨーク、ミラノ
海外のコレクションに立つ日本人モデルを何人も抱えている有名なエージェント。
「その気があるなら電話くれって」
名刺を手にした和虎が目を丸くする。
「マジ?!ここKENTAROがいるとこじゃん!何、柊兄移籍するの?!」
「んー‥‥そうだな」
今までスチールしか知らなかった俺を高く評価してくれたことは自信になったし
ランウェイは刺激的で
最高に気持ちが良かった。
これからはショーモデルを中心に日本以外でも仕事がしたいと思った俺にとって
この移籍話はチャンスだった。
「そっかあ‥‥だよねー。今日の柊兄、すっごく光ってたもん」
目をキラキラさせて名刺に見入ってた和虎
嬉しそうに俺に視線を向ける。
「柊兄は世界に通用するモデルになれるよ‥‥絶対!」
そう言ってグラスを手に持つ。
「柊兄の世界進出に乾杯っ」
「気が早えーよ」
苦笑する俺に和虎は無理矢理グラスを持たせて
俺達は又グラスを合わせた。