禁断兄妹
第22章 俺はもう、あいつのことは忘れる
「久しぶりだね、ここで二人で飲むの」
「そうだな」
カウンターの奥
いつもの席に陣取って
和虎は嬉しそうな顔を見せた。
さっきは公式のパーティーだったし
仕事の延長という気がしてたけれど
こうやっていつものバーで和虎と飲むのは
気持ちがほぐれた。
「そういや、アパートの住み心地どう?独り暮らし始めて、もう二ヶ月以上経つよね」
「ああ‥‥ボロいとこだけど、慣れたよ」
「アタシのこと、いつ招待してくれるの?」
「‥‥しねーし」
「え~?!部屋探しも付き合ったのに!女ばっか連れ込んで」
「うるさいよ」
ママと俺達の他に客のいない店内
いつものようにたわいのないバカ話をしていると
一人の客が入って来た。
「あら要(カナメ)ちゃん、いらっしゃーい」
ママの声に和虎が反応する。
スーツ姿に眼鏡のその男は
俺の奥に座っている和虎に気づいて笑顔を見せた。
「あれ、今日はお客さんなんだね」
「かなめっち、いらっしゃーい。そーなの今日はアタシお客ーっ。デートっ」
男はデートという言葉に一瞬端正な顔を曇らせて
俺を見た。
和虎の男か
俺が無言で和虎を見ると
俺の言わんとしたことがわかったのか
和虎は首を振りながら
「常連さん」
と小さな声で言った。