禁断兄妹
第25章 逃げるの‥‥?
ピリリリリリ‥‥
遠ざかる母さんの声に替わって
はっきりと聞こえた携帯の着信音
ピッ
「‥‥はい‥‥」
俺は枕に頭をつけたまま
電話をとった。
「ごめん、寝てた?」
和虎‥‥
今さっきまで夢を見ていたせいか
頭も身体もひどく重くて
もやがかかってる。
「ああ‥‥寝てた」
「今どこ?パリ?」
「いや‥‥こっち」
「えー、いつ帰って来たのさ」
「昨日の朝‥‥」
二週間ほど滞在していたパリから帰って来た俺は
時差ボケか身体がだるくて
昨日からほとんどベッドの中にいた。
「薄情だなー。俺にも移籍しろとか言っておいて、自分はさっさとパリ行って、帰って来ても連絡なしかよっ」
頬を膨らませてるのが見える気がする。
相変わらずだな
俺は寝返りをうちながら思わず笑った。
「しろ、と言った覚えはないけど‥‥移籍の件、どうだ。オーナーいい顔しなかったか」
「そうだね‥‥がっかりしてた。でも、柊兄についていくんじゃないかって、思ってたって。
渋々だけど、OKしてくれたよ」
「そうか‥‥」
俺は移籍先のエージェントに
和虎は欲しくないかと持ちかけて
もし来るなら歓迎するという返事をもらった後
お前も移籍しないかと和虎を誘った。
驚く和虎に
この前もっと頼れって言っただろ
お前がいないとなんだかつまらないから
そう言ったら和虎はまた泣いて
地の果てまでついていくと言った。
「ごめんあのさ‥‥俺、超眠いんだけど」
「さっさと用件言えって?すみませんねお休み中のところっ」
「いや‥‥で、何」
俺はあくびを噛み殺した。
気を抜くと眠ってしまいそうだ。
「今俺、その移籍の件で事務所来てたんだ。そしたら偶然、すっごく可愛い子に会ってさ」