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禁断兄妹

第26章 君は愛されている



「あの、和虎さん‥‥」


「ん?」


「お兄ちゃんは嫌いな食べ物ばっかりって、本当ですか?」


私は
最初に和虎さんが何気なく言った一言が
ひっかかっていた。


「うん。基本野菜嫌いで、特に茄子とピーマンは絶対食べない。チーズ系とか乳製品は全滅。豆類も嫌がるねー」


和虎さんが当たり前のように言う。


「そ、そうなんですね‥‥」


「それなのにあんな体でかいんだから、不思議だよねー。まあ、家ではちゃんと食べて、外では好きにしてたんだろうね」


「‥‥」


そんなに偏食だったなんて気がつかなかった。

お母さんも
知らないんじゃないかな


「萌ちゃんの前では、なんでも食べてたんでしょ?」


「はい‥‥」


「それは、萌ちゃんの為だよね‥‥わかるよね?」


和虎さんの言い方は優しいけれど
どこか言い聞かせるようで
私は背筋を伸ばしながら頷いた。


「柊兄は基本好き嫌いが激しいし、我が儘だし、ドライだよ。でも君の前では好き嫌いをせず、礼儀正しく、優しかったはずだ。
 ‥‥そうだよね?」


「はい‥‥」


「口で言うだけじゃなくて、自分がそうすることで、君に教えようとしてたんだ。教育係りを自認していたからね。そのかいあって、君は健康で、愛らしい子に育った。
 でも柊兄は、君のお手本になろうと、少し無理をしていた。
 今も彼は、無理をしていると思うよ」


思ってもみなかった方向へ転がった話に
私の胸がざわめきだす。

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