テキストサイズ

禁断兄妹

第26章 君は愛されている


「ごめん、お待たせっ」


席に戻ってきた和虎さんはすごく嬉しそう。


「柊兄、駅に着いたって。あと十分くらいかな。もうすぐ来るよ」


「‥‥」


「わー、怖い顔になったっ」


「‥‥」


「緊張してるの‥‥?」


優しい声
思わず頷いてしまう。


「そっか、久しぶりだもんね。柊兄が引っ越してから会ってないって言ってたもんね‥‥五ヶ月ぶりくらい?」


「はい」


「柊兄、最近また一段と格好良くなっちゃってるから、楽しみにしててっ」


和虎さんはそう言いながら
ジャケットを羽織って
帰り支度‥‥?


「俺ね、帰るから。あとは二人でゆっくり話してみてご覧」


「えっ!」


「大丈夫。柊兄は君に会いたくて、ここに来るんだから」


和虎さんはにこっと笑った。


「あの、今日は、本当にありがとうこざいました。ご馳走様でしたっ」


お辞儀をして顔を上げると
私を見つめている和虎さんの
優しい顔。


「柊兄から、聞いてるかも知れないけど‥‥俺はね、女の子が好きじゃない。がちゃがちゃうるさいからね。
 でも、萌ちゃんは違う。君からは音が聞こえない。心地いい静寂を感じる‥‥」


和虎さんは微笑みながら
長い指を空中でふわふわと動かした。


「シーンとした美術館で、お気に入りの絵の前に立っているような、そんな感覚‥‥その絵は透明感のある素朴な水彩画で、光が溢れている感じ‥‥」


和虎さんは
つまり君のことがすっごく気に入っちゃったってことさ、と言って
笑った。


「さっき俺が言ったこと、忘れないでね。
 君は愛されている。
 柊兄はね、君のことを、とっても愛しているんだよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ