禁断兄妹
第30章 お仕置き
制服から部屋着に着替えた萌は
俺の為にと夕飯を作り出した。
キッチンに立って
とんとんカチャカチャやっている。
俺から離れないと今にもセックスになだれ込みかねないと
不安になったんだろうか
あのままソファにでも座って
もっといちゃついていたかった俺はお預けをくらった気分
とりあえず俺もTシャツにハーフパンツというラフな格好に着替えて
ダイニングテーブルでビールを飲みながら
対面キッチンに立つ萌を眺める。
「お父さんとお母さんね‥‥お兄ちゃんのこといつも気にしてるよ‥‥」
萌が手を動かしながら
ゆっくりと話し出す。
「ご飯、ちゃんと食べてるのかって、ちゃんと暮らしていけてるのかって、いつも言ってる‥‥すごく心配してるよ」
俺とあの二人の仲を取り持とうとしてるのか
真面目な口調
いじらしい
「明日、見舞いに行くよ‥‥父さんと母さんに、会うよ」
「え‥‥明日?本当っ?」
萌が顔をあげる。
「もうそういう事、気にするな‥‥ちゃんと向き合うから」
「‥‥うんっ」
頷く萌
少し泣きそうになっている。
「父さんの病状‥‥どうだ」
「うん‥‥良くは、ないよ‥‥でも、お父さんは落ち着いてる‥‥すごく痛かったり苦しかったりしてると思うんだけど‥‥落ち着いてる」
「そうか‥‥」
ステージ4という状態だと
前に電話で話した時に美弥子は言っていた。
年内もつかどうかもわからないと。
そんな話を萌も聞いているのかわからないから
迂闊なことは言わないほうがいいだろう。
「じゃあ、新しい病院に明日一緒に行こうね。お父さんもお母さんも喜ぶよ」
「ああ」
微笑むと
萌も嬉しそうに俺に微笑みを返す。
父さんのこと
俺達のこと
不安がないといえば嘘になる
それでもこの胸には
暖かな気持ちが広がる
想いが
溢れる
「萌」
「うん?」
「‥‥ありがとうな」
お前がいなければ
俺はあれほど激しく人を憎むことは
なかっただろう
でも
こんなに深く人を愛することも
なかった