禁断兄妹
第32章 心の準備
「そんなにくっつかれると‥‥やばいな」
頭の上で聞こえた
苦笑い混じりの声
「わっ、ご、ごめんなさいっ」
私は慌てて身体を離した。
音を聞くことに夢中になって
身体ごとお兄ちゃんに密着させていた。
恥ずかしくて
顔が上げられない。
「すごく嬉しいんだけどね‥‥我慢できなくなるから」
苦笑いしてる。
声でわかる。
大好きなその表情が見たくて
ぎりぎり見えるくらい
少しだけ顔を上げると
すぐそこにお兄ちゃんの瞳
「我慢しなくてもいいなら、話は別だけど‥‥?」
私の目尻に残る涙を指先で拭いながら
首を傾げて
悪戯っぽく瞳を煌めかせる。
その
ん?って顔も
好き
ふわふわとした気持ちのまま
見とれてしまう。
こんなに近くで見ても
綺麗な顔
お兄ちゃんて
こんなだったかな
お兄ちゃんが変わったのか
それとも
私の気持ちが変わったから
「萌、」
私を呼ぶ声が
少しだけ上ずった。
「‥‥料理はもう、いいよ。風呂に入ろう‥‥?」
「えっ」
え、もういいって
お風呂って
え‥‥?
「いいだろ‥‥?」
お兄ちゃんは時々優しい声のまま
強引な言葉を使う。
まるで
私に魔法をかけるように