禁断兄妹
第35章 一人じゃない
「‥‥柊」
長い沈黙の後
改まった声で名を呼ばれて俺は顔を上げた。
「俺はもう、長くない。美弥子と萌のことを、頼みたい」
「‥‥」
「できれば家に戻って、美弥子と萌を守ってやってくれないか‥‥」
父さんは返事を待つように
静かに
けれど熱のこもった目で
まっすぐに俺を見る。
まるで最期の願い
息苦しくて
俺はその問いには答えずに
無理矢理笑いながら目を逸らした。
「気が早いな‥‥もう少し、頑張れよ」
俺の言葉に
父さんもふふっと笑う。
「そりゃあ、もう少し生きても良かったなって思ってるさ。お前や萌の成長が楽しみだし‥‥結婚式とか、孫の顔だって、見たかったよ」
「‥‥」
「仕方ないんだ‥‥運命ってやつだな」
父さんは静かにそう言って微笑んだ。