禁断兄妹
第36章 話したいこと
体力の落ちている父さんには
長い会話も体の負担になるんだろう
疲労の色が見え始めた横顔
俺は立ち上がった。
「そろそろ帰るよ‥‥また来る」
父さんは黙って俺を見上げる。
「飲みに行く約束‥‥忘れないでくれよ」
何気なく言った俺を
父さんはじっと見上げながら
口を開いた。
「延命治療でしかないけど‥‥効果が出れば、来年の春まではもつと言われてる」
「‥‥」
「でも、効果が出ない可能性もある‥‥来週自分がどうなっているか、俺にもわからない」
淡々とした穏やかな口調で
不意に突きつけられた残酷な現実
「何言ってんだよ‥‥よせよ」
俺は笑おうとして
頬がひきつるのがわかった。