禁断兄妹
第36章 話したいこと
「話したいことなんて別にない‥‥ただあなたと酒を飲んでみたい、それだけだ」
速まる鼓動を抑えつけながらコートに袖を通した俺は
意を決して振り返った。
「それとも逆に‥‥俺に話したいことが、あるの」
笑みを浮かべながら軽く言ったつもりだったのに
口から出た俺の声は
自分でも後悔するほど緊張感に満ちていた。
「‥‥俺も別にないよ」
父さんはあっけらかんとそう言って
微笑んだ。
「お前にないなら、それでいいんだ‥‥」
穏やかに微笑む父さんの表情からは
その言葉以上のものは
何も読み取れなかった。