禁断兄妹
第38章 あなたを助けたい
「‥‥萌さん」
私の後ろを歩いていた灰谷さんが
思いきったように私を呼んだ。
「はい‥‥」
歩きながら返事をする。
どうしても振り返れない。
灰谷さんの顔
今日はまだ見れない。
「これ、落としませんでしたか」
「えっ‥‥」
意外な言葉に思わず足を止めて振り返る。
灰谷さんが手にしていたのは
昨日私が柊に渡そうとしたあの手紙だった。
あっと声をあげそうになって
息を呑む。
「マンションの前に落ちていました。メールボックスに入れようかとも思いましたが、不審に思われそうで‥‥」
「あ、ありがとうございます」
精一杯普通の声を出して封筒に手を伸ばす。
「萌さん」
灰谷さんがもう一度私の名を呼んだ。
「正直に言います‥‥昨日、私は‥‥聞いてしまいました‥‥」