禁断兄妹
第38章 あなたを助けたい
「あ、あの‥‥っ」
灰谷さんも私を追うように歩き出す。
このマンションのコンシェルジュは何人かが交代で勤めていて
その中で一番若い灰谷さん
ここへ引っ越してきてからほとんど毎日挨拶を交わすうちに
私達はたまに立ち話をしたりするほど仲良くなっていた。
優しくて物静かな佇まいに似合わず格闘家が本業らしくて
この仕事はアルバイトみたいなものだと聞いたことがある。
その立派な体格に似つかわしい低くしっかりとした声は
間違えようがない
昨日私と柊にライトを向け鋭い声で咎めたのは
灰谷さん
あの時私は
灰谷さんの声だと気づいていた。
もしかしたら灰谷さんも
あれが私だと気づいているのかも
しばらく会いたくなかったのに
どうしてこんな時に
鼓動は恐ろしいほど速くなっていく。