禁断兄妹
第39章 和虎
「ねえ、柊兄‥‥柊兄が『俺が今人を殺してきたって言ったらどうする』って言ったこと、あったよね」
「‥‥」
柊兄が俺を真夜中に呼び出した日
初めて柊兄の涙を見た日
「俺、あの時本当は一瞬、信じちゃったんだ‥‥怪我してたし、服は破けて血がついてたし‥‥乱闘の後って感じだったから」
柊兄は黙って俺の話を聞いてる。
「だからあの時、逃避行しようって言ったのは、本気だった。柊兄を警察なんかに渡さないって、一緒に逃げようって、本気で思った‥‥」
「‥‥自首を勧めろよ」
柊兄が小さく笑った。
「あー‥‥それは考えつかなかった」
俺の言葉に柊兄がふふっと苦笑いする。
「つまり俺はね、柊兄がどんなことをしでかしても、たとえ人殺しになっても‥‥軽蔑なんてしない。俺は柊兄から、離れない」
「‥‥」
「話してくれて、ありがと」
「お前にだけは本当のこと、話しておきたかったから」
お前にだけは
そう思ってくれるの
胸がいっぱいになる。