禁断兄妹
第39章 和虎
「ママ、虎ちゃんにビールあげて」
常連客が俺に酒を注文してくれる。
「ありがとっ、頂きまーす」
「ずっと来ないからみんな心配してたよ。でもママは連絡取ってるみたいだったから、生きてはいるらしいって噂してた」
「生きてるわよー。仕事とか色々忙しかっただけっ」
仕事が忙しくなってきたのは本当だ
でも実際は
あの日ここで要が柊兄に吐いた言葉が忘れられなくて
思い出す度俺を最悪な気持ちにさせるから
この店から遠ざかっていただけだ。
「そうだ、要さんにも教えてあげよ。あいつ虎ちゃんファンだもん、絶対来るよ」
常連客の一人が電話を始めた。
要
その名前にママが反応する。
「よしなさいよ、要ちゃんは仕事忙しいんだから」
「日曜日は休みのはずだよ‥‥あ、もしもし?」
店に来るのは久しぶりだけどママとは時折メールのやり取りはしていたから
要があれからも店に来ていること
俺に会いたがっている様子だということは
知っていた。
だから俺は
この店に寄りつかなくなった。
そのことを知っているのはママだけ。
俺と要に身体の関係があったことを知っているのも
ママだけだった。
「ねーねー、和虎が会いたがってるって、言っておいて」
俺の言葉にママが驚いたように目を見開く。