禁断兄妹
第39章 和虎
「忙しそうじゃん。ママ、手伝うね」
顔馴染みの客達に挨拶しながらカウンターの中に入った俺に
ママが近づいてくる。
「‥‥おかえり」
「ただいま」
この店での俺とママの挨拶
「ずっと来なくてごめん」
「来たい時に来たらいいの。それでいいの」
「うん」
俺はここで時折バイトをしていたけれど
店に飲みに来てママが忙しそうだったら自主的にカウンターの中に入って手伝うという程度のもの。
当然シフトもないから
ママが言うように来たい時に来ればいいんだけど
毎週のように来ていたのにこんなに長く顔を出さなくて心配をかけてしまった。
俺の目が赤いことに気づいているんだろう
ママは眉尻を下げて無言で頷きながらじっと俺を見る。
いつもの
何かあったのね、でも大丈夫よ、の顔
「そのママの顔が見たくて、来ちゃったよ」
俺がそう言うとママは感極まった顔をした。
「こんな髭面で良ければ、気の済むまで見つめてっ」
「あ、もう充分」
俺は笑いながら腕捲りをして
シンクに溜まっていたグラスを洗い始めた。