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禁断兄妹

第40章 二人の守護者


ドキン、と
心臓が跳ね上がった。

優しい笑顔が見えるような声に胸がときめく。

本当?
嬉しい

そう言いかけてはっとする。


───あの男から、性的虐待を受けたんじゃありませんか‥‥?───

───彼を庇っているんですか?!あの美しい姿形の下は、とんでもない悪魔―――


下には灰谷さんがいる。

さっきいたということはきっと朝まで
だめ
呼び止められるかも

胸の奥
きつく締めつけられて
また冷たくなっていく心と身体


「柊、あのね、来ない方が、いい‥‥」


「え?」


「コンシェルジュの灰谷さんが、昨日の私達の会話、聞いていたの」


「灰谷さん‥‥?」


「昨日私達にライトを向けた人‥‥私、灰谷さんと少し仲が良かったから‥‥あれが私と柊だって、気づかれたの‥‥」


「‥‥そうか」


柊の声は落ち着いていた。


「私と柊が兄妹だってことも、あの人は知ってるの‥‥さっき下で、色々、言われ、て‥‥」


恐怖が甦って言葉に詰まる。


「怖い思いをしたんだな‥‥ごめんな一人にして」


優しい声に
我慢していた涙が零れそうになる。


「あの人、柊のこと怒ってるの‥‥とんでもない悪魔だって、だから来ちゃ駄目―――」


「萌」


力強い声で名前を呼ばれた。


「俺は行くよ。そこは俺の実家だ‥‥帰って何が悪い?」


「でもっ」


「電車が来た‥‥じゃあ、後で。何も心配しないで待ってて」


「柊‥‥っ」


電話は切れてしまった。

力が抜けてソファに倒れこむ。



来てくれる

嬉しい
すごく嬉しい

だけど下には
灰谷さんがいる。

柊を黙って通してくれるとは思えない。

私を守ろうと
きっとあの人は
柊の行く手を塞ぐだろう

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