禁断兄妹
第48章 あなたを許さない
灰谷は荒げた声を詰まらせて
怒りの表情を苦しげに歪ませた。
「覚えておけ‥‥モデルなんて続けられないくらい、その自慢の顔を叩き潰してやる。それが嫌なら、萌さんには二度と手を出すな‥‥」
殺気のこもる言葉を残して
灰谷は俺の横をすり抜けていく。
「灰谷」
その後ろ姿を呼び止めた。
「お前こそ、これ以上萌におかしなことを吹き込んで、怯えさせるな‥‥格闘家だかなんだか知らないが、俺だってお前の腕くらい折れる」
灰谷は足を止め
ゆらりと横を向いた。
「‥‥俺は守りたいだけだ‥‥」
祈るように呟いて俺を振り返る。
「あなたはどうなんだ‥‥俺の腕を折る?萌さんを守る為にか?違うだろう。あなたは萌さんを地獄に引きずり込みたいだけなんだろう‥‥?」
静かに降り始めた雪
俺達を別つように落ちてくる。
灰谷は
俺を見つめる目を哀れむように細めた。
「‥‥はっきりと口に出せない想いなど、ろくなものじゃない‥‥」
そして前に向き直ると
立ち尽くす俺を残し
灰谷は音もなく立ち去った。