禁断兄妹
第51章 口に出せない想い
「あんなにカッコよくて、さらっと海に行ったりするんだもん。お兄ちゃん、モテるだろうねー」
お母さんは感心したように頷く。
「‥‥お母さん、テレビ見ていい?」
私はなんとか会話を終わらせようとするけれど
「今の時間は面白いのないよ。ほら手を動かして」
「‥‥」
「お兄ちゃんて、女優さんと熱愛とか、女性関係の噂が華やかじゃない。あれって本当なのかしらね」
「‥‥なのかしらね?」
私が真似をして首を傾げるとお母さんは笑った。
本当は柊から少し聞いた。
海からの帰りの電車内
週刊紙の中吊り広告に柊の熱愛が載っていたのを
私が思わず指差したから。
───俺の女関係の噂、萌の耳にも少しは入ってるかも知れないけど、みんな遊びで、恋人とかじゃないから‥‥───
みんな遊び
この有名な女優さんもあの女子アナさんもモデルさんも
遊び
それはそれでひどい話のような気がする。
素直な気持ちでそう言ったら
柊はばつの悪そうな顔でしきりに髪をかき上げた。
───俺、家を出てお前と離れてから頭がどっかおかしかったんだ。
もうこういうのはやめるから。ちゃんと綺麗にするから。萌さえいれば俺はそれでいいんだ。だからその‥‥ごめん───
柊がそんなことを私に謝るなんて
びっくりして思わず笑ってしまった。
柊も苦笑いして
私達は二人でクスクス笑った。
「‥‥もーえっ」
ああもう
私柊のことばかり思い出してる。
「萌、もしかして風邪引いちゃった?なんだか顔が赤いし‥‥」
「うーん、確かに熱っぽい気はするけど‥‥」
身体が熱いのは嘘じゃない。
「やっぱり。なんだか様子が変だと思った。熱計ってみようか」
「はぁい‥‥」
体温計を取りに席を立ったお母さんを
私はため息をつきながら見送った。
嘘はついていない
ただ言わないことがあるだけ
それはこんなにも
息苦しい。