禁断兄妹
第51章 口に出せない想い
お母さんは
すごーいっ、と目を輝かせて頬を両手で挟んだ。
「冬の海に連れていってくれるなんて素敵ね‥‥デートみたい」
「‥‥お母さん、顔に小麦粉すごくついたよ」
「あ‥‥」
お母さんは自分はお兄ちゃんが大好きなのにうざったがられてると言って
私が柊に何かしてもらうとこんな風に羨ましがるのは昔から。
でも
デートみたい、という言葉に
私の胸は穏やかではいられない。
「ね、どこの海に行ったの?どんなこと喋ったの?」
「海の名前は聞いたけど忘れちゃった‥‥すごく綺麗なところだったよ。私は学校のこととか話したり、お兄ちゃんはお仕事のこと教えてくれたり‥‥」
「うんうん」
柊は嘘をつく必要はないと言っていた。
一緒に海に行ったことも昨日柊が泊まったことも
隠す必要はないと言っていた。
―――二人だけの秘密以外のことなら、聞かれたら話せばいい。嘘をつく必要はない―――
今日の朝
柊に押しきられる形で一緒に入ったバスルーム
浴槽の中にゆったりと腰を下ろしている柊の両手と両足の間
体育座りで固まる私の耳元で
後ろから柊が艶やかな声で囁いた。
―――‥‥ただ、こういうことは二人だけの秘密だよ―――
―――う、うん‥‥―――
―――俺が萌の髪を洗ったことも、秘密‥‥―――
―――うん‥‥っ‥‥―――
フッと小さなため息のような笑い声に耳をくすぐられて
震えてしまう身体。
―――今からすることも、秘密だ‥‥―――
―――きゃっ‥‥や‥‥ぁっ‥‥―――
バスルームにある小さな窓から射し込む朝日が
波打つお湯に反射してキラキラ光って
あの海みたいな煌めきの中
髪を洗ってあげるだけだよって言ったのに
あんなに明るいところで
朝から
「もー、萌ったら又手が止まってるっ」
「は、はいっ!」
胸のドキドキは
止まらない。