禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
「さっき電話で話したら、近くで飲んでるらしくて後で顔出すって」
「ほ、本当?!」
心臓が一瞬で高みに跳ね上がる。
「今の柊兄とは会わせないほうがいいと思ってたんだけど、その情けない顔見てたら、ちょっとはいいんじゃないかなって‥‥」
「ありがとう!わー、メイク直さなきゃ!」
バッグを手に立ち上がろうとした私を
「ちゃんと聞いて由奈」
和虎君が真面目な顔で制する。
「噂には聞いてるかも知れないけど、柊兄が荒れてるのは事実なの。言い方や態度が前とは違うわ。でも変に干渉しちゃ絶対にだめよ‥‥あんたなんて袈裟斬りにされるわ」
「う、うん」
「柊兄が好きなら尚更、今は一歩引いて見守ってあげるのよ。ちょっと顔見たら、帰りな」
「‥‥うん」
思いがけない和虎君の真剣な言葉に緊張を覚えるけれど
一ノ瀬君に会える
この胸の高鳴りに勝るものはなかった。
───柊兄が荒れてるのは事実なの───
半信半疑だった私が和虎君の言葉の意味を身をもって知ったのは
お酒の匂いを纏った一ノ瀬君がやって来て
三秒後のことだった。