禁断兄妹
第53章 由奈~終わりの始まり~
吹きつける挑発的な威圧感に頭の中が真っ白になって
身動きもできない。
「‥‥お前が帰らないなら、俺が帰るけど」
一ノ瀬君は立ったまま咥えタバコで私を見下ろし
席につこうともしない。
「由奈は私が呼んだのよっ。久しぶりなんだから挨拶くらいしなよ。ほら座って」
馴れているような落ち着いた和虎君の声に
これが今の一ノ瀬君なんだと愕然とする。
これが
「帰る‥‥邪魔したな」
私達に背を向け歩き出すその足取りに
一瞬
酔いが見えた。
「ま、待ってよ一ノ瀬君!」
音をたてて閉まったドア
慌ててバッグを掴み追いかけようとする私に
「放っておきな」
和虎君の鋭い声が飛んだ。
「だって、きっと酔ってるよ、一人にさせられない」
「ごめん由奈。柊兄が予想以上に酔ってた。今日はダメよ。あんたが危ないわ」
「放っておけないよ、送ってくる!」
「やめときな由奈、あんたケガするわよ!」
和虎君の声を背中で聞きながら店を飛び出した。
ビルの階段を駆け降りながら
まるで初めて出逢ったあの日みたいだと思った。
一ノ瀬君
私はいつもあなたを
追いかけている