禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「これ、お土産ってほどじゃないけど、良かったらみんなで食べて」
買ってきたいくつかの菓子折りを差し出すと
「そんな気を使わなくてもいいのに‥‥ありがとうございます」
ツトムさんは少し表情を和らげた。
「ところで‥‥修斗、いる?」
その名前に反応して
修斗の舎弟頭であるツトムさんは背筋を伸ばした。
「カシラはまだです。後二十分くらいですね‥‥この店にはいつも開店の三十分前に入られます」
流れるような動作で
袖先から現れた高級な腕時計に視線を落とす。
カシラ
以前のツトムさんは修斗のアニキと呼んでいた。
おじいちゃんに聞いて今日初めて知ったけれど
修斗は数ヶ月前からうちの組の若頭になっていたらしい。
「修斗、若頭になってたんだってね。びっくりしちゃった」
間が持たなくて口にした。
「ご存じなかったんですか?」
修斗が私のマンションに足を運んでいることを知っているツトムさんは
怪訝そうな顔をする。
「うん‥‥おじいちゃんに聞いて今日知ったよ」
修斗はマンションにやって来ても雑談もろくにしないくらいで
特に自分のことや組に関することは一切口にしなかったから
私が知るはずもなかった。