禁断兄妹
第54章 由奈~終わりの始まり②~
「すみません嬢。カシラは他の店のVIP対応で、今日はこちらに来れないそうです」
「え‥‥」
「伝言を読ませて頂きます。
‥‥本日はお越し頂きありがとうございます。誠に申し訳ありませんが‥‥」
読み上げられる型通りの挨拶
私は力の抜けた身体をソファに沈めた。
「―――落ち着いたら又東京へ伺いますので、それまでお元気で‥‥以上です」
ツトムさんは折り畳んだ紙を胸ポケットにしまいながら
私を見た。
「嬢からも何か伝言があれば、お伝えします」
本当はいるんでしょ
口にしかけた言葉を飲み込んだ。
修斗
これがあなたの答えなのね
「あのね‥‥本当にごめんなさいって‥‥今までありがとうって、伝えて‥‥」
修斗は私の目付役を正式に解かれることになった。
今日おじいちゃんと話してそう決まった。
もう修斗の耳には入ってるのかも知れない。
実は
おじいちゃんは私も成人したことだし
目付役はもうしなくていいと言っていたそうだ。
でも修斗は
危なっかしい私が一人前になるまでもう少し側にいますと言って
その役を降りずにいたと聞いた。
「仕事、頑張ってと伝えて‥‥」
うちの組の若頭としてだけじゃなく
会長付きとして総本部にも出入りしているという修斗
本当は私なんかのお守りをするような人じゃない
もう会うことはないだろう。
ツトムさんは強く眉を寄せ
何か言いかけたけれど再び唇を結んだ。
「それと‥‥」
夢は絶対に叶えてみせるって伝えて
そう続けようとしたけれど
胸にしまった。
―――実現してから言ってもらえます?―――
そう一蹴された日のことを思い出したから。
私は一人笑った。
「‥‥いいや。それだけ、伝えて‥‥」