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禁断兄妹

第54章 由奈~終わりの始まり②~


「わかりました。必ずお伝えします」


ツトムさんは頷くと
部屋の奥へと歩いていく。

他と同じカーテンがかけられ壁だとばかり思っていたそこには
ドアが隠されていた。


「店にはもう黒服や女の子達がいますから、こちらから外へご案内します。さあ、どうぞ」


私はバッグから取り出したサングラスをかけ
立ち上がった。


「ツトムさん‥‥最後にもう一つ、迷惑かけてもいい‥‥?」


「え?」


開かれたドアに背を向け
店内に繋がるドアへ向かう。


「嬢っ?!」


思いきり開け放つと
フロアに散らばる黒服と華やかな女性達が一斉に私を見た。


「修斗!いるんでしょう?!出てきなさいよ!!」


張り上げた大声に
しん、と凍りつく店内


「嬢っ」


強張った表情のツトムさんが駆け寄ってくる。


―――嬢。バイトを辞めてカネを使いなさい―――


修斗がいつも持ってきてくれてたお金
おじいちゃんが私に渡すように伝えていたのは
あの半分の額だった。


「何様よ修斗!!せっかく来てやったのに、私のこと誰だと思ってんのよ!!」


ポケットマネーを上乗せしてくれていたと
今日初めて知った。


「嬢、失礼します」


押し殺した声と共に抱かれた肩
VIPルームへ連れ戻そうとツトムさんの腕に力がこもる。


―――嬢は本当に、知らないことだらけですね‥‥―――


本当に
ツトムさんの言う通りだ。

何も知らず

知ろうともせず

私は震える両足を踏みしめてその場に踏み留まり
最後の声を振り絞った。


「もうあんたを呼びつけては追い返すのも飽きたわよ!!二度と呼ばないわ、じゃあね!!」


そして私はツトムさんに引きずられるようにして
店を後にした。

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