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禁断兄妹

第57章 会いたかった


「ただいま」


クッキーの写真を送った数日後の夕方
柊が家に帰ってきた。

今日の夜は柊も和虎さんもお仕事がないらしく
急だけどこれから三人でご飯に行くことになって
私を迎えに来てくれた。


「おかえりなさい柊君!」


お母さんはとても喜んで
飲み物やお菓子をあれこれテーブルに並べて柊を苦笑させる。


「これから飯食いに行くんだから、そんなに出されても」


「そんなこと言わないでー。あ、このクッキーは萌が型抜きしたのよ」


「ああ、これか。これは食う」


目の前に広がる以前と変わらない穏やかな風景
だけどそこにいるのは
もうお兄ちゃんじゃない



私の恋人


「萌、着替え終わったのか?‥‥そんなとこに突っ立ってないで、座れよ」


部屋着から少しきちんとした服装に着替えた私は
優しい声に呼ばれて隣に腰掛けた。


「良かったねえ萌。お兄ちゃんのお友達と会うなんて素敵よね」


「えへへー」


「和虎は別に素敵じゃないけどな」


笑いの滲む軽やかな声
柊が纏うムスクの深い香りと共に
俯く私を甘苦しく満たす。

柊が私に温かな眼差しを向けているのを感じるのに
正面にいるお母さんが気になって
見つめ返すどころか顔を上げることもできない。

すごく
会いたかったのに

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