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禁断兄妹

第57章 会いたかった


和虎が予約したのはヒカリの個室
店の二階にあるその部屋に俺は入ったことがなかったけど
この店の常連の和虎は何度か利用しているらしい。

店員に案内され
俺達の前で開かれたドア


「あ!萌ちゃん!」


先に着いていた和虎が
満面の笑顔で席から立ち上がった。


「和虎さん‥‥!こんばんは」


弾んだ声の萌が深く頭を下げる。


「寒かったでしょー!さあ入って入ってっ」


シャンデリアに照らされた十畳ほどの室内
女性が好みそうなシャビーシックなインテリアでセンス良くまとめられている。


「すごい‥‥!」


キラキラとした瞳の萌が室内と俺を交互に見る。

ピンク色に上気した頬

嬉しいんだな

可愛い


「‥‥入ってごらん」


萌は俺の言葉に頷くと
辺りを見回しながらゆっくりと足を進める。


「わあ‥‥!可愛い!」


「フランス映画に出てくる女の子の部屋みたいでしょ。可愛いし、こじんまりしてて落ち着くよねっ」


感嘆の声をあげる萌に続いて部屋に入った俺は


「ヘイ、柊兄。お久!」


笑顔の和虎といつものハイタッチを交わした。


「‥‥悪い。時間ギリギリになっちまった」


和虎とは今日のこともあって電話やメールで連絡は取り合っていたけど
会うのは久しぶりだった。


「どうせ萌ちゃんとのお喋りが楽しくて、ノロノロ歩いてたんでしょ」


「‥‥」


「図星かよっ」


和虎はぷっと吹き出すと
その笑顔のまま俺をじっと見た。


「良かったね、柊兄。おめでとう」


静かな声でそう言って
眩しいものでも見るように目を細める。

おめでとうなんて照れ臭いけれど
和虎のどこか真面目な声と表情に
俺も真っ直ぐに向き合った。


「お前のお陰だ。ありがとう」


和虎の笑顔が泣き出しそうに歪む。


「自分のことみたいに嬉しい。本当にさ」


光る目尻を拭う涙もろい和虎
俺はその肩を抱くように叩いた。

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