禁断兄妹
第58章 嵐の夜
「きゃっ‥‥!!やだ、離して!」
必死にもがいても
玄関へ向かってあっという間に引きずられていく。
「ちょっと修斗!バカ!痛い!!」
修斗はもう何も反応しない。
「傷つくかどうか、会ってみなきゃわからないじゃないっ!!」
力いっぱい修斗の腕を振り払った。
弾みで身体がフローリングの床に叩きつけられる。
「‥‥っ!」
「嬢っ」
はっとした声
かがみこんだ修斗が両手を伸ばす。
「今日は私の誕生日なの‥‥っ!」
夢中で叫んだ。
「お願い会わせて!!この先、一生祝ってくれなくてもいいから‥‥っ」
動きを止めた修斗に向かって土下座した。
「お願い‥‥っ」
凍りつくような沈黙の中
私の荒い息遣いだけが響く。
冷たいフローリングに触れている額
さっき打ちつけた所が熱を持ちじんじんと痛い。
ゆらりと空気が揺れて
修斗が立ち上がった。
「誕生日なんて、二度と祝わねえ‥‥」
顔を上げると
私を冷ややかに見下ろしている失望の瞳
その視線がふっと私から逸れて
向けられた大きな背中
「必ず一時間で降りてこい‥‥来なければ踏み込んで一ノ瀬柊を八つ裂きにする。俺は本気だ」
修斗は振り向かずに部屋を出ていった。