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禁断兄妹

第59章 嵐の夜②


「ねえ‥‥どうして私なんかに、モエのこと話してくれたの?とぼけても良かったのに。みんなにバラしちゃうかもしれないよっ」


おどけてそう言ったら


「お前はそんな奴じゃないし‥‥もう嘘はつきたくなかった」


なんの気負いもない自然な言葉が返ってきた。


「話すつもりはなかったし、絶対に秘密にしておきたいことだったけど───」


柊君は頭をかくように髪をかきあげて微笑んだ。


「たとえバラされたとしても、身から出た錆だ。甘んじて受けるさ」


そんな風に言われたらもう何も言えない。


「‥‥じゃあな。帰るよ」


柊君が離れていく。

手の中のコートが滑るように逃げていく。

待って

行かないで

これで最後だなんて


「柊君っ‥‥」


振り返った柊君
ぶつかるように抱きついてキスをした。


「ふふっ‥‥モエには、内緒にして」


最初で最後のキス

身体は重ねてもキスだけはしてくれなかった
頑なにモエに操を立てていたあなたへ
ささやかな復讐


「‥‥やられたな‥‥これは内緒にしとく」


優しい苦笑い


「うん‥‥約束だよ」


遠く離れても
あなたの胸に私をひとかけらでも残しておいて


「さよなら柊君‥‥」


「ああ。さよなら」


頷いた柊君
綺麗な笑顔

その瞳に映る最後の私は
綺麗に笑えているかな

さよなら柊君

今までありがとう

正直で優しいあなたも
冷たくすさんだあなたも

愛しさは何も変わらない

あなたがいる世界はいつも美しかった

愛してる
ずっと愛してる

さよなら

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