禁断兄妹
第59章 嵐の夜②
「由奈‥‥お前、日本でトップ獲りたいって言ってたよな。お前なら獲れる。あと少しだ‥‥頑張れよ」
「‥‥」
柊君
本当に何も知らないんだね
良かった
「元気でな。今までありがとう」
ありがとうなんて
「や、やめてよ、今生の別れじゃあるまいしっ」
明るく言ったつもりなのに
コートを掴んだままの手も声も震えた。
「‥‥友達に戻ろう?前みたく、和虎君とかみんなと飲んだり‥‥ね?」
全ての感情を押し潰して必死に笑いかけると
柊君は儚く微笑んで首を振った。
「身体の関係があった女性を、今は友達だとあいつに紹介するなんて、俺にはできないよ」
「紹介なんてしてくれなくていい。別に言わなきゃわからないじゃない」
「彼女に紹介できない友達は嫌だし、隠し事もしたくない」
穏やかな口調に秘められた揺るぎない想い
「正直ね」
出会ったあの日にも言った言葉
柊君は小さく笑った。
「それに‥‥俺、来年から少しずつアメリカに拠点を移して活動するつもりなんだ。前から準備していて、具体化してきた」
「アメ‥‥リカ‥‥?」
「世界で勝負したいんだ。だからお前とだけじゃなく、和虎や他の奴らともそんなに会えなくなる」
「モエは‥‥」
「連れていくよ。‥‥今すぐにではないけど」
こんなに愛されているモエ
それにひきかえ
オトモダチの私は友達にも戻れず
もう会うことも叶わない。
何もかも失われていく。