テキストサイズ

禁断兄妹

第60章 嵐の夜③


静まり返った真夜中のマンション

由奈の部屋を出て
エレベーターホールに向かって歩く自分の靴音がやけに響く。

やって来たエレベーターへ乗り込み
閉まり始める扉に息をついた瞬間
堰を切ったように泣き出す由奈の声が微かに聞こえた。

はっとして顔を上げた俺の目の前で閉ざされた扉
箱が降下していく。


───さよなら柊君‥‥───


ドアが閉まるその時まで微笑んでいた由奈
いつも明るく笑っていた由奈

ごめん

胸が痛いなんて
そんなことを言う資格俺にはない

再び開いた扉
俺はただ前を見据え
振り返らずにマンションを後にした。

悔恨と自責
胸と頬が熱くなる。


───モエが、柊君の胸に咲いてる一輪の花だって‥‥私、わかってたよ───


一輪の花

俺の胸に咲くのが萌なら
由奈の胸には俺が咲いていたんだろうか

こんな俺が花だったなんて

見上げた真冬の寒空
いくつもの花が浮かび
春風にそよぐように揺れた。

由奈
トップを獲れよ
俺も負けない

いつかてっぺんで会えたなら
お前ともう一度
握手がしたい

ストーリーメニュー

TOPTOPへ