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華のしずく~あなた色に染められて~

第2章 二

 信成の視線は庭に向けられてはいたが、最初のようにはるか彼方を見てはいない。その眼には確かな光があった。
 しばしの静寂があった。どこからか風が吹き、石榴の樹の葉がさわさわと微かな音を立てて揺れた。
「はい」
 その静寂を存外に明るい珠々の声が破った。信成は改めて妻となった少女を見た。

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