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華のしずく~あなた色に染められて~

第25章 【花屑(はなくず)~華のしずく~】

「寧子」
 低い、緊張を孕んだ声が間近で聞こえた。典房の整った顔が淡い闇の中に浮かび上がっている。寧子は良人の顔に只ならぬものを見た。刹那、嫌な予感が湧き上がった。
「たった今、内々に知らせがあった。本日早暁、本仁寺で義父上が逆臣に討たれたそうだ」
「―!」
 寧子の身体中を雷に打たれたような衝撃が走り抜けた。あまりのことに咄嗟には声も出ない。そんな妻を労しげに見つめ、典房は続けた。

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