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華のしずく~あなた色に染められて~

第26章 【月華―月姫(TSUKIHI)―~華のしずく~】 月華

 と、背後で草叢を踏みしだく足音が聞こえ、月姫はビクリとして身を慄わせた。こんな夜更けに裏庭に踏み込んでくるのは、大方、深酔いしすぎた酔客の一人だろうか。そんな客は大抵、品の悪い聞くに耐えないような台詞を吐き散らしながら、近寄ってくる。
 異国人の月姫は、早口になると日本語を解することはできない。だが、そんな男たちの眼の奥にぎらつく下卑た光だけはよく判った。

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