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華のしずく~あなた色に染められて~

第26章 【月華―月姫(TSUKIHI)―~華のしずく~】 月華

 後にはただ一人、男が魂を奪われたように茫然と立ち尽くしていた。と、一陣の風が吹き抜け、早咲きの桜の花片が一斉に舞い上がった。雪のように降り注ぐ花びらの雨の中、男はじっと立ち尽くす。ただ月姫の去った方を憑かれたような眼で追いながら、印象的な女の瞳を男は思い出す。
 その瞳の色は湖のような―深く澄んだ蒼。

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