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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 初夏とはいえ、夜更けともなれば、夜気にもひんやりとしたものが混じる。信成は隣の珠々に気遣わしげに問うた。
「寒くはないか?」
「大丈夫でござります」
 珠々は信成を見て、淡く笑った。城へ来たばかりの頃は、まだ随分と子どもっぽさの残る少女だったが、信成の寵愛を受けるようになって、日毎に固い花の蕾が少しずつほろこびていくように、その美しさにもほのかな艶と色香が混じるようになった。

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